• Outline

    2019年度東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻において、菅亮平通年ゼミ「プレゼンテーション・スタディ」を開催します。本講座は、アーティストにとってのプレゼンテーションの在り方を主題としたレクチャー及びディベート形式のゼミであり、2019年6月から2020年1月までの間に年十回のプログラムを予定します。本学油画科に在籍する学生のうち希望者を主な受講対象としますが、他科の在学生も参加可能です。開講日時はその都度告知しますが、月に1~2回の頻度で、授業終了後の夕方の時間帯に、参加学生からの質疑応答や個別対応の時間を含めて90分~120分のボリュームで構成します。また、10月に油画科で開講される「2019年度実技カリキュラム 非常勤レクチャーC」の期間内には、アーティストにとってのプロポーザル(企画書・提案書)の作成をテーマに計四回にわたって集中講義を行います。

  • Purpose

    アーティストにとって、「表現」という言葉の意味やその行為の範疇はどこまでを指すのでしょうか。それは、作者と作品の単一的な関係の中だけで終始するものではありません。美術が「見て、感じ、考え、表し、伝える」という人間の社会生活におけるコミュニケーションの根幹に寄与するものであると考えたとき、他者との関係性に基づく「伝達」や「共有」といった観点が「表現」には常に伴います。従って、各自の創作活動において豊かな社会性を獲得するその過程の中の「プレゼンテーション」の総体が、アーティストにとっての「表現」であると考えられるのです。本講座では、ポートフォリオ、プロポーザル、ステートメント、トークなど、作品制作の周辺あるいはその前後に必要とされる表現活動について、その基本となる考え方や具体的なメソッドを体系的に紹介することを目指します。またここでは、現代美術を中心的な話題として扱いますが、多様な創作活動の在り方を前提とし、様々な表現領域に適用可能な拡張性のある講義を旨とします。「自分の考えを他者が理解できるように目に見える形で示す」という、アーティストの基本に立ち返りながら、プレゼンテーションにおける総合的な表現力について考えていきましょう。

  • Program

    ① ポートフォリオ (6月)

    ② アーカイブ (7月)

    ③ プロポーザル 1 (10月)

    ④ プロポーザル 2 (10月)

    ⑤ プロポーザル 3 (10月)

    ⑥ プロポーザル 4 (10月)

    ⑦ ステートメント (11月)

    ⑧ トーク (11月)

    ⑨ インターネットとソーシャルメディア (12月)

    ⑩ 英語 (1月)

  • Lecture

    プレゼンテーション・スタディ 第1回

    「ポートフォリオ」終了

     

    日時:2019年6月28日(金) 17:00~19:00

    場所:東京藝術大学上野校舎 中央棟第5講義室

     

    アーティストにとっての作品制作とは、長い期間にわたって連綿と継続されていくものです。またその変遷と展開の中で、各自の制作のテーマやスタイルを徐々に構築することができます。そしてプレゼンテーションの現場では、自身の創作活動の軌跡を伝えるための「ポートフォリオ」の作製が重要になります。ポートフォリオは、単に時系列に従って作品の写真を収めた「アルバム」とは性格を異にするものであり、活動の概要あるいはその総体を代弁してもらうための的確な編集が必要になります。ここでは、アーティストが自身のアイデンティティを表明し各自の活動の起点を形成しうるポートフォリオの在り方を理解することを目指して、その基本的な構成や作製方法を参考事例と共に紹介します。各自が作製したポートフォリオのファイルやデータを当日に持参してもらえれば、それらについてコメントをする時間も設ける予定です。

     

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    授業用レジュメ>

    プレゼンテーション・スタディ 第2回

    「アーカイブ」終了

     

    日時:2019年7月16日(火) 17:00~19:00

    場所:東京藝術大学上野校舎 絵画棟2F演習室​

     

    デジタル化が進む今日の社会においては、電子メディアによるアーカイブの在り方が様々な局面で議論・模索されています。しかし、美術は一般に「モノ」を扱う分野でもあり、物理媒体と電子媒体の双方のアーカイブが常に課題になります。そして、自身の作品や展覧会といった創作活動のハイライトを写真や映像で適切に記録・保管・整理し、これを活用することは、アーティストのプレゼンテーションにおいて最も重要な要素であることに他なりません。また一方で、アーティストにとっての創作とは、単にスタジオの中での作品制作や展覧会の開催だけを指すわけではなく、そのワークフローは日常生活の中で既に始まっています。何気なく撮影したスナップや、思いついたことを書き留めたメモ、気になったウェブサイトの記事のスクリーンショットなど、普段の生活の中で紡がれた細やかな情報の集積が作品制作に関わってくると言えます。さらに、制作プロセスにおける種々のアーカイブは、ときに作品の成立そのものに大きく関与し、それ自体が作品を形成することさえあるのです。ここでは、単にプレゼンテーションという観点だけにとどまらず、美術とアーカイブの関係について多角的に考察することを目指します。

     

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    授業用レジュメ>

  • Extra

    特別講義 (自作論) 

     

    「絵画と絵画性」終了

     

     

    日時:2019年6月25日(火) 17:00~18:30

    場所:東京藝術大学上野校舎 絵画棟 油画技法・材料研究室

     

    私は2008年頃に画家として自身のアーティストのキャリアを開始しました。美術を学び始めた当初から、特に近現代のドイツの画家や写真家たちに関心を持ち、現代社会において変わりゆく現実の在り方を絵画や写真を通して表現した彼らの芸術の在り方に大きな影響を受けました。近年は、美術館やギャラリーの展示室を題材としながら、ドローイング、写真、様々な印刷技術、模型、3DCG、映像、サウンド、建築などの様々な表現領域にまたがって作品制作を行っています。しかし、そのような多様な表現メディアを横断する自身のアプローチは、一歩一歩、絵画という分野から地続きに展開してきたものです。私は、筆と絵具とキャンバスで制作したイメージだけを絵画として捉えるのではなく、そのメディウムとしての意味の射程はより広く設定されうるべきだと考えています。ここでは、この十年間の自作における「メディウム・スタディー(表現表現メディアの研究とその実践)」を一つの事例として紹介しながら、「絵画」と「絵画性」について考察する機会を作りたいと思います。

     

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  • Teacher

    菅亮平(かん りょうへい)。美術作家。2019年東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻非常勤講師。1983年愛媛県生まれ。2013年に「ドイツ学術交流会奨学金(DAAD)」を受賞して以降、ミュンヘンと東京を拠点に活動し、2016年に東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程修了、博士号(美術)を取得。2019年にミュンヘン国立造形美術アカデミー修了、フローリアン・プムへスル教授のもとでマイスターシューラー号を取得。近年は主に美術館やギャラリーの展示空間を題材とした平面作品や映像作品を発表する。主な個展に「As you see it」(ヤマモト・ケイコ・ロシェックス / ロンドン / 2019年)、「In the Walls」(資生堂ギャラリー / 東京 / 2017年)、「Room A.EG_05」 (ミュンヘン国立造形美術アカデミー / ミュンヘン / 2014年)、「White Cube」(トーキョー・ワンダー・サイト / 東京 / 2013年)などがある。主な受賞歴に「シェル美術賞2012 島敦彦審査員賞」(2012年)、「野村美術賞」(2015年)、「第一回枕崎国際芸術賞展 大賞」(2016年)、「デビュタント・スポンサーシップ 」(バイエルン州科学芸術省 / 2019年)などがある。


    アーティストウェブサイト:https://ryoheican.com

    コンタクト:kan.ryohei@fa.geidai.ac.jp